蓮華温泉と雪倉岳(1999年4月16〜18日)
メンバー 王様

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 五人グループのMOさんたちより一日早く、私は発った。
 栂池スキー揚のゴンドラを降りて、樹林帯を適当に登る。性格は素直だから、皆の行くルートは行かない。根性が曲がっているので、なるべく短距離を行く。天気は快晴、見晴らしは良し。狐が振り向いてくれた。
 栂池ヒュッテから天狗原への登りは、広大で近そうに見えたが、なかなかきびしい。ヤットコサ、天狗原に着いた。昼前だ。ソョとの風もない。
 日の前に乗鞍岳の大斜面が広がる。時間もあるし、空身で登る。だだっ広い山頂には、アベック(これは今では死語ですか)が一組いるだけ。白馬、蓮華岳は目の前。 日本海も見える。乗鞍岳からの華麗な滑降については、雪質が……今は語りたくない。アッという間ではあった。
 天狗原の祠の前から、真北へ滑っていくと、振り子沢の源順に立つ。誰も見ていないし、荷物も重いので、華麗ではない格好で滑る。シュプールがコッパズカシイ。滑るうちに慣れてくる。良い斜面が次々に出てくる。ああ、楽しい。
 途中で昼寝。風がなく暖かい。鳥の声がするだけだ。
 ゆるやかに流れる雲に、自分の心を映してみる。あれれ?なにも映ってないぞ。自分の鼾で目が覚めた。
 快適な滑りは続くが、中ノ沢へのトラバースが気になってくる。先行のシュプールに従って中ノ沢に入る。樋のように狭い沢を振り子滑りだ。あっという間に蓮華温泉に着く。雪倉、朝日岳が目の前に広がっている超豪華テント場で、ゴロリと横になる。

4/17
 翌日も快晴。7時前、雪倉岳に向かう。まず兵馬ノ平に滑り降り、滝見尾根を越えて瀬戸川に降りる。そこから雪倉への登りだ。下部はあちこちに亀裂が入っている。上に行くに従って斜面は急になり、クラストして怖いほどだ。 ピッケル、アイゼンでツボアシが正解だが持ってきていない。スキーアイゼンも持ってきていないので、慎重に慎重に行く。山頂近くで傾斜が緩くなった。真っ白な雷鳥のつがいに出会った。たった一人の山頂。13時過ぎ。6時間半ほどの登りだった。 365度の眺めだ。白馬方面が凄い迫力。
 さて、滑降だ。カリンカリンのテロンテロン斜面が数百メートル続く。はじめの緩斜面は華麗なるウェーデルンをきめていったが、急斜面に変わったところで、コケた。ゾっとした。足の下から数百メートルの滑り台を、想像してミナセー。それからは斜滑降、キックターンで降りたが、エッジがはずれたらどこまで滑り落ちるのだろうか。雪質が少し柔らかくなって、快適な滑降になった。亀裂の入ったグシヤグシヤ斜面は、一気に滑り降りた。
 瀬戸川から蓮華温泉に帰るには、一度登り、兵馬ノ平に下り、また温泉に登らなければならない。面倒だ。トラバースして行けば、蓮華温泉の前にピタリと着けるのではないか、という名案がうかんだ。それで尾根をいくつか巻いて行った。しばらく行って、そろそろこの尾根を巻けば温泉が見えるぞ、と思って行ったら、沢が出て行き止まった。ここは何処?現在地が分からなくなった。もうすぐ4時だ。
 ザックを下ろして腰掛け、しかる後、地図を見(正しくは、地図を読む、という)、周りの地形を見、高度肝を見る。ブナ林の綺麗な所だ。少し下り過ぎたようだ。30分ほど登ったら、温泉の屋根が見えた。ほっとした。
 温泉に着いて、外から「MOさ−ん」と美しいテノールで呼んだ。窓からFSさんが顔を出した。
 「部屋はどこですか−」
 「108でーす」
 「いちばんはじですかー?」
 「イチマルハチでーす」
 「イチバンハジですねー」
 「イチマルハチー!!]
 「は−い、イチバンハジですねー」
 「108だってば!」
 昨夜は一人でテントだったが、今夜は温泉とお酒と皆で楽しいオシャベリ。口が一つで耳が二つなのは、人の話をよく聞けということ。もちろん私はほとんど聞き役。

4/18
 最終日も良い天気。7時半過ぎ出発。沢を滑り降り、ヤッホー平に登り返す。昨日登った雪倉が懐かしい。角小屋峠への登りが、最後のアルバイトだったが、きつかった。その後は、木地屋までの滑降。案内板がついているので迷うことはないだろうが、何処らあたりを滑っているのか現在地が特定できないのは面白くない。水芭蕉を見たりして、昼前頃に木地屋についた。


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