キンキン錦秋の恋ノ岐川(2001年10月6〜7日)
メンバー 王様、FS、MR、MY、ON


 只見川の支流には、北ノ又川、中ノ岐、二岐川などあるが、ここだけ恋ノ岐川と色っぽい名前になっている。そばには傾城沢というのがあるから、往時の銀山平に何か由来があるのかもしれない。が、深く詮索して「肥の股皮が、正しい」などと分かったら、股ズレの辛さに涙が出そうなので、美しいままにしておこう。
 長岡から参加の、ONさんとは5日深夜、平ケ岳登山口で合流。一台をそこにデポし、6日早朝、恋ノ岐橋へ移動し、入渓した。他に車は見当たらない。我々だけのようだ。
 橋からすぐに、沢に入り遡る。810m地点から最終的には、2141mの平ケ岳山頂まで標高差1300mを超える。
 ミニゴルジュやら開けた所やら、小滝が続いて快適に進む。大きな釜を持った滝を左からヘツッて越えようとしたとき、すずめちやんがズルリッといって落ちた。これが魚止ノ滝なのだろうか。首まで浸かって寒そ。
 全体にこの沢の岩はヌルヌルしている。ふつう、流水の中の岩は、フリクションが効くものだが、ここは黄土色した岩で、どれもこれも滑りやすい。
 その後は、ナメが続く。いいなあ。東北らしさが出ている。清水小屋跡の付近は、開けている。清水沢自体は、チョロチョロした流れ。伏流になっているかもしれない。
 だんだん疲れが出てくる。地図と何度も首っ引きだが、先はまだ長い。しかし、はじめは緑が多かった両岸も、ブナの黒い幹に黄色や赤が増えてくる。
 滑りやすい石に足をとられて、何度もコケる。日差しがあるから、そう寒くはない。嫌になるほど歩いて、もう少しで今日の泊り場である、オホコ沢が近づいた頃合いになって、小滝が連続してきた。暑い夏だったら、気兼ねなくジヤブジヤブ越えてゆくのだが、濡れたくない一心だから、必死に岩にしがみ付いて、疲れましたね。
 気がつけば、周りの山は真っ赤に色づいている。一滝登る毎に歓声とため息をつく。きれいだなあ。
 10時間ほど行動して、やっとオホコ沢出合着。左岸の高台にタープを張った。
 陽はすでに山の端に隠れている。ガクガク震えがくる。アチコチから貧弱な薪を集めてきて焚き火をする。全く貧弱な炎から、徐々に徐々に焚き火らしくなってきたときは嬉しかった。焚き火で体が温まるとホットして和やかな気分になる。体からモウモウ湯気が出ている。頭上は満天の星。流れ
星一個メッケ。
 食当は、みやちゃん。暖かいなんとか汁を食す。タープの下でツェルトを被って寝た。ぜんぜん寒くなし。ぐっすり眠る。

 翌朝5時起床。まだ暗い。お茶を飲みラーメンを食べて、出発。今日は長いゾ。もう一泊するべきところを、一気に登って、一気に下山するのだ。
 オホコ沢を分けて遡ると、水流はずいぶん減少する。朝日に映える紅葉を見上げながらひたすら歩く。時折、小滝が現れるが全然問題無し。
 昨日もそうだったが、今日も足元に魚影がいくつも走ってゆく。標高が上がってくると、周りの景色も一段と鮮やかになる。
 小滝の多いゴルジュ状が長らく続くと、二又にぶつかる。右に10mの滝。左を覗くとこれまた10mの滝。本流である左10m滝を、左の薮を漕いで巻く。
 40mナメ滝。これははじめ左を登ったが、ヌルヌルしているので右の乾いた斜面を行く。
 その先にまだ小滝があったが、もはや源流の雰囲気。いかに薮漕ぎを少なく登山道に出られるか研究する。左上の稜線には、登山者の姿が見える。
 適当な所から、左の小沢に入る。最後は、根曲り竹に突入。熊の糞を発見。 10分弱で稜線に出た。池ノ岳直下1870m地点、最短の薮漕ぎだった。13時になろうとしていた。日の前に、山頂を雲に覆われた燧ケ岳、景鶴、至仏山がある。
 そこからカラ身で平ケ岳へ向かう。荷物が無いと体が浮きあがるようだ。徐々に雲が上がってくる。満ち足りた気分である。平ケ岳には、14時前に着いた。剣ケ倉沢を遡行してきた「トマの風」のメンバーが居た。
 記念写真を撮り、14時下山開始。それからが長かった。また重い荷物を背負って、樹林帯を下る。展望は無いし、ぬかるんだ道。登ったり、下ったり尾根道はヤダ。その点沢は良い。登るときは登るだけ、上り下りが無い。あたりまえか。(待てよ、巻いたときは、沢に下りるなあ)
 台倉山に着いて一気に展望が開けた。
 ワオ。東側斜面が一面、上から下まで真っ赤赤の赤。
 真っ赤赤を眺めながら下台倉山に着いたのが、17時。最後の下りになって、だんだん暗くなってきた。途中からは真っ暗。
 みやちゃんとONさんはどんどん下ってゆく。取り残された我ら三人にヘッドランプは、いづみちゃんの一個だけ。 kinkinのは、電池切れ。すずめちゃんのはザックのどこかに潜り込んでて、見つからない。途中でまた探したら出てきた。
 どうも痩せ尾根を下っているらしいが暗くて良く分がらん。いつのまにか頭上は満天の星になっている。
 目の前にヘッドランプの明かりが見える。「お−い、みやちゃん」と声をかけても返事が無い。冷たい奴だと恩ったら、ほかの高年3人組がオタオタ下っているのだった。尾根の上部を振り返れば、明かりがチラチラうごめいている。天気が急変すれば、遭難ということになりそうだ。
 いいかげんイヤになったところで、みやちゃんがヘッドランプと電池を持って登りかえして来てくれた。ありがと。
 足元が明るくなって、元気よく下り、19時過ぎに登山口に着いた。12時間以上の行動だった。年寄りにはキツイ。
 恋ノ岐橋へ戻り、銀山平キャンプ揚に一泊するのだが、その前に一つ片づけておかなければならない重大事があった(それはシ!ミ!ツ!)。
 銀山平のそばにある丸太沢の風呂に入った。金魚養殖用の桶が三つ並んでるだけ。湯はパイプからドンドン出てくる。豆電球一個で暗いが、ビールを飲みつつのんびりする。銀山平キャンプ場についてテントの中で乾杯するときには、もう23時を回っていた。ONさん差し入れのお酒で乾杯。美味かった。 充実した山行だった。



遡行恋ノ岐川

王 金々  西暦弐千壱年秋

満山紅葉真赤赤 不見沢中他者姿
落滝壺一回二回 滑滝滑石鶴鶴鶴
有魚影足元飛翔 泊地焚火尻暖々
星満天流星一条 小滝連続楽勝登
藪漕僅少七八分 下山経由平ヶ岳
行動及十二時間 登山終了真暗闇
疲労甚大満足大 嗚呼終了今年沢


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