知床岳(2009年)
メンバー、(L)ON、王様、FS、MC


 当初計画は、知円別から硫黄山〜ルサ乗っ越し〜知床岳〜相泊、であった。しかし記録を見ると、風の恐怖ばかりが出てくる。それに今年はかなり雪が少ないようである。そこで計画を縮小して、相泊〜知床岳〜知床沼〜相泊となった。
 ONちんとMCさんは、1日から女満別へ行って、ガスボンベやら食料やらを準備してもらった。後発の私たちは、朝一番のJALで羽田を発った。10時過ぎ、女満別からレンタカーに荷物満載で知床半島に向かう。途中、止別駅の駅舎のラーメン屋さんで5年ぶりのラーメンを食す。線路の遙かには、海別岳が真っ白い。快晴の下、知床横断道路を越えて、相泊に着いたのは14時過ぎ。準備をしていると早速、おじさんが寄ってくる。「熊が出ている」と言う。隣には札幌ナンバーが2台停まっている。

5月2日
相泊(14:30)〜カモイウンベ川渡渉(16:50)〜320m(17:50)

 1泊2日予備1日で荷物を背負う。泊り道具とスキーでかなり重い。歩きにくいスキー靴でゴロタ石の海岸を歩く。海の向こうに国後はほんのかすかに見える。20分ほどでカモイウンベ川。橋を渡って左岸の笹尾根を登る。0mからの登りだ。うっすらと踏み跡がついている。辿っているうちに雪が出てくる。1時間ほど歩るくと雪の上に熊の足跡が出た。我々はもちろん熊よけの準備は怠らない。ラジオを点け、鈴を鳴らし、その上ビーコンを捜索モードにして、ピーピーワイワイカランカランなのだが、ヒグマの領域にお邪魔してるわけだからどうなるか分からない。
 今日の行動は、カモイウンベ川の二俣を渡渉して474mの尾根上にテントを張る予定だ。3時間あれば行ける予定だ。なだらかな笹と樹林の中を左下に川音を聞きながら登る。
 しばらくして右から流れてくる沢を渡る。これが二俣か、やけに水量が少ない。ここからスキーを着けて登るが、なだらかな樹林帯で現在地が分からない。目の前に尾根の斜面が現れた。ONチンがGPSを取り出すと、目的地は90度左方向だという。左に行くと盆地状の地形が現れて、地図と一致する。その先にテントが1張りあって坪足の二人がいた。熊の寝床にも良さそうなところだ。
 そこに二俣の渡渉点があった。正しい二俣の水量は多いのだが、都合良く大木が流れの上に倒れかかっていて、それで渡ることが出来た。少し登ると風倒木なのか雪崩の跡なのか樹木がなぎ倒された荒れた風景になる。その上320m地点がまばらな岳樺と雪の平で、明るい絶好のテント場だった。登ってきた樹林の斜面が見渡せ、その先に海が広がる。予定より150mほど低い地点であるが、意外に時間がかかって3時間20分ほど歩いたことになる。
 夕食は、麻婆春雨。熊対策で残飯を出すことは許されない。飲みきり、食べきり、一切のゴミは持ち帰り。半月の夜、早めに寝たが、外には、ライトを点滅させておいた。さら夜中に目が覚めるたび、何度か鈴を鳴らした。今朝は東京で目覚ましの音で起き、今宵は知床の山中で鈴を鳴らす。幸せである。

5月3日
テント場(06:00)〜稜線(09:18)〜知床岳(10:20)〜テント場(11:30)〜相泊(14:30)

 朝、起きると海は雲海に覆われて、気温が高い。天気予報はあまり良くないが、高曇りである。朝食中に坪足2人組が通り越して行った。雪の状態から、知床沼周回のコースは止めにして、知床岳ピストンに計画を変える。テントを残して食料は全部担いで出発。
 少しなだらかに登ると、急斜面が400mほど続く。上部に3人組が悪戦苦闘してシール登行している。気温が高く雪が腐っているので、我々は途中から坪足で行く。MCさんは最後までシール登行した。稜線付近になると這い松が覆っていてルートファインディングが難しい。さすがに地元の人たちは最短距離で行く。
 稜線に出ると、広くて白くなだらかな斜面が知床岳まで続く。そこに大きな熊の足跡がある。こんな所まで何の必要があって登ってきたのだろうか。それからゆるく1時間ほどの登りで山頂に着いた。
 山頂直下で坪足2人組とすれ違ったが、斜面を駆け上る熊を見た、とかなり興奮して報告をうけた。別のスキー3人組は、我々の少し下でテントを張ったらしいが、晩と朝に熊の親子が尻セードーで遊んでいるのを見たらしい。
 山頂は少し風があるが、冬山としては普通の部類だ。高曇りでぼやけてはいるが、南西方向には硫黄山の左右の長い斜面がオホーツク海と太平洋の海岸線に落ちて行く。振り返れば、知床沼の台地から先に山が連なっている。とても満足な眺めだ。
 下りの滑りは、楽しかった。急斜面も丁度良いザラメ雪で快適に滑って、1時間でテント場まで戻った。また重荷を担いで、雪のあるギリギリまで滑った。雲の切れ間から少しずつ青空がのぞいてきた。
 海岸について潮風を受けながら相泊まで20分ほど歩くが、とても満たされた気分であった。目の前の海を、岬にむけてシーカヤックが10艘ほど出発したところだった。
 駐車場に着くと、どこで見ていたのか昨日のおじさんが現れて、無事に帰って何よりだ、などと言う。話を聞けば、どうやら地元ガイドのようだ。

 さて、今夜はどこに泊まるかが問題だ。そんじょそこらの空き地にテントを張ったら、ヒグマがやってくる。キャンプ場は、雪の下だ。考えあぐねて、とりあえず羅臼の道の駅で、キンキとツブ貝と牡蠣をを購入する。魚屋のおじさんが良い人で、蟹みそやウニやタコやら試食させてくれる。今夜はどこに泊まる?と聞かれる。まだ決まっていない、と言うと、10kmほど離れているがキャンプ場がある、と教えてくれた。行ってみればそこは最高のキャンプ場だった。かなり広大なキャンプ場の目の前が国後、振り向けば遠音別岳、知西別岳から羅臼岳が白く続く。キャンプ場はまだ開いてないが、ゲートを閉めてるわけでもなく、熊の心配もない。町に戻ってセイコーマートで食材と酒を大量に買い込んで泊まったのであった。
 明日の朝は、ゆっくりだ。なにせ知床横断道路のゲートが開くのが10時!なのだ。のんびり飲むしかない。 明日は知西別岳だ。


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