大深沢から関東沢(2011年8月20〜22日)
メンバー、王様、WT、MC、TR、SZ


 かねてからの計画がある。八幡平から伝左衛門を下り、滝ノ沢〜障子倉沢を越えて、大深沢を遡る、のである。しかしながら思い通りに行かないのが沢人生である。
 今年の天候はかなり不安定だ。出かけるしばらく前からアメダスと睨めっこしているが、大深沢あたりはかなり降っている。出かける直前も降っている。かなり降っている。
 花巻まで出かけて様子を見たが、初日の入渓は諦めざるを得ないことになった。日程短縮になるのでこれでまた伝左衛門は先送りになった。
 初日は何をしたかというと、焼石岳の周りを一回りして横手焼きそばを食して、花巻に戻った。
 計画は縮小されて、大深沢を下降して三つ又まで。それから関東沢を遡る、ということになった。

8月20日
大深橋・赤川沢(08:50)〜(09:50)大深山荘〜(11:00)小さな湿原〜(11:35)大きな湿原〜(12:00)北ノ又沢下降開始〜(15:30)三つ又テント場着

 今日の行程はそれほどきつくはない。樹海ラインの大深橋から大深山荘へ登り、大深沢を下り、三つ又まで、だ。
 八幡平の駐車場で大深沢源流地帯を眺め下ろす。今回も行けなかった沢が目下に見える。いつまた来られるやら。
 樹海ラインを下り大深橋へ行く。すでに1パーティが遡行準備をしている。行き先は、同じ三つ又だという。う〜む、テント場は確保できるかな?
 赤川沢を遡って小一時間で大深山荘着。ここから地獄のような藪こぎで源流の湿原まで下って行くのだが、前回は遡って1一時間の藪こぎだった。今回は、平らな藪こぎで現在地が不明だ。結局1時間半もかかって、源流の大草原にたどり着いた。
 藪こぎは面白い。道がない、いつ着くか分からない、現在地がいつも不明である。地図を読む、コンパスを見る、適当な方向に行く、少し行っては微調整する、笹に隠れた枯れ沢に落ちる、樹木があると笹が薄いのでそちらの方へズレる、後でまた微調整する。などしながら、結局は目指したところにピタリと着いたときはうれしいものだ。ムフフ、と薄ら笑いをし、ざまぁ見ろと誰かに言ってみたくなるのである。
 源流の湿原に着いて、あとは綺麗な沢を下るだけ。チョロチョロの流れが太くなって、急なゴーロ状を下るとナメが続いてくる。
 男女二人が遡行してきた。玉川から本流を遡ってきたらしい。あれだけ降っていたのに遡行出来たそうだ。沢は行ってみなければ分からないものだ。帰京してから過去の写真を見ると、今回が一番水量が少ないようなのである。
 ナメの適当なところで、ソーメンタイム。
 難しいところはない。綺麗なナメをどんどん下る。ただ2度目というのは、当然ながら最初の時に比べて感激は薄い。途中で一ヶ所懸垂下降をしたが、予想以上に時間がかかって三俣についた。先行していたパーティは、仮戸沢を下ってかなり前についたようだ。良い場所に張っている。
 仮戸沢側の台地にテントを張った。釣り師たちは結構なイワナを釣り上げてくれて、懐かしい美味しい刺身、焼き物、イクラを食した。いつもながら贅沢のかぎりだ。焚き火がうれしい。
 その後、単独行が登ってきた。狭いところに泊まって、明日は東ノ俣へ行くらしい。

8月21日
ナイアガラ滝見物(07:30〜08:30)〜三つ又(08:30)〜(09:10)天狗湿原(09:30)〜(09:40)関東沢大滝〜(10:00)下の二股〜(11:40)八瀬森山荘(12:25)〜(14:40)東の又源流部〜(15:40)大深岳〜(16:00)大深山荘

 朝はゆっくりで、今日の予定は、天狗湿原を越えて関東沢のどこかで泊まる予定だ。
 出発前にナイアガラ滝を見物する。今回で3回目だが、大深沢のシンボルは見ずばなるまい。滝も良いが、その前のナメが素晴らしい。天国的とはここのことだ。
 見物して1時間ほどで戻り、東ノ沢から天狗湿原を目指す。荷を担いで東ノ沢を少し行って右の小沢を登る。以前登ったときはピンク色の沢床の小沢だったが、今回は黒い、しかもヌルヌルの急な沢だ。どうやら1本手前の沢を登ったらしい。結構イヤらしい角度だったが、笹を掴んだりしながら登り、マスタケなどを発見しながら藪を漕ぐと、前方が明るい。懐かしい天狗湿原に着いた。
 こういうときほどうれしいことはない。地図を頼りに、自分で道を選び、誰もいない目的地にたどり着く。ホンの小さなものではあるが、冒険心を満たしてくれる。
 湿原には誰もいないが、草の倒れた跡が細長く延びている。しかも斜面の上の方に倒れ延びている。雨水の跡なら下方に延びるわけだから、動物が上方に歩いていったものだ。熊か?鹿か?
 空からは少し雨粒が落ちてきた。そこでまた今後のルートを検討する。今夏は雨には神経質になっているのだ。それで関東沢から八瀬森山荘を目指すことに変更した。天狗湿原を横切り、関東沢左俣へ下る。下ったところには立派な大滝がある。ここら辺りはWTさんが歩いている。そこから下って、関東沢二俣までは20分ほどだった。
 二俣からは八瀬森山荘までの間は以前、葛根田川から八瀬森を経て下ってきたことがある。あまりきれいな印象は残っていなかったのだが、今回遡ってみるとこぢんまりとしたなかなか良い沢だ。釣り師達は何匹か釣り上げている。45分ほど遡って八瀬森の湿原に出た。もはや秋色になっている。薄ら寒い。
 まだ昼なのでここに泊まるかどうか思案した。天気も良くないので先に進むことにした。縦走路は樹林帯が多く展望はない。たまに湿原が現れるくらいで、ただひたすら歩くだけ。最も眠くなる歩きだ。東ノ俣の源流の湿原で休憩。懐かしくも美しいが、大深岳はまだ遠くに見える。右下には葛根田川の源流地帯の湿原が見える。いつかは行ってみた、おいでオイデしている。
 4時間もかかって大深山荘に着いた。
 草原の水場へ行って水を汲み、釣ってきたイワナを調理して食べた。始めは外でやっていたのだが、さすがに寒くなったので、室内に入った。我々だけなので使いたい放題だった。沢中の泊まりが1晩だったので少し不満ではあるが、きれいな避難小屋で気のおけない仲間と静かに飲み更けてゆくのは気持ちの良いものだ。

8月22日
大深山荘(07:50)〜(08:45)大深橋

 明けてみると、ガスで真っ白だ。小屋のすぐ横から赤川沢の下りは小一時間。あっという間に大深橋着。さっさと片づけて蒸ノ湯へ向かう。
 この温泉は、良かった。泉質、眺望、湯量、温度、宿の対応など良い温泉の条件はいろいろあるが、分析はおいといて、湯上がり後に「ああ、いい湯だなあ」と思わず口に出るのが良い温泉なのだ。もう一度行ってみたいと思う温泉だ。

 日程は1日短縮になったが、良い沢旅だった。


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